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詩情がわく 鳥よありがとう

今日は私のうれしい日だ
私の心は今 詩の中にひたりきっている

五月十七日の夕べ
浜寺の学園に帰ってきた私は 門の近くで 
ものすごく沢山の鳥の鳴く声を聞いた

我が家のカナリヤでもない
夢かなと思えるくらい 沢山の小鳥がさえずっている
とたんに「うれしく」なる

どこだろう
門をくぐってから それが分った
玄関の入口のところの楠の大木に
「すずめ」が集まっているのだ

小鳥はオスとメスが 夕方になるとよろこんで
さえずることを カナリヤで知っていた

私は彼等が 群れをなして楽しんでいるのを
乱さないように心をくばった
静かに木の下を通りぬけた 少しの音も立てないようにと

静かな自然界の調べが 静かに位置し
木の下には 白いあやめが静かにのびて
鳥の声に 席をゆずっている
一度か 二度 靴のなる音がしただけで
通りぬけることが出来た
やっとの思いで台所まで

途中 鳴き声が小さくなると 見つかったかなと心配した
二階にあがり家の者に
「あの鳥のこえを聞いてごらん」というと
「何ですか あの鳥は 今日はやかましくないていて
子供がふえたのですやろ」という

なる程 子供の数もふえての大家族集団だろう
大分暗くなりだした
まだ少し 鳴いている

詩がうまれそうだと思いつつ 木の下を通りぬけたが
それがせいいっぱいで 詩はうまれなかった
うかばなかったが 私の心の中は
私全体が 詩の中にひたっている

ああ 静かになった
鳥の声に変わった
南海電車の音が聞こえる

しかし車が通りすぎると
また鳥の声に変わって 耳に聞こえる
心の耳に

なんて楽しい―――うれしい 今日一時だったことか
生れて こんなうれしい一時があっただろうか
鳥よ ありがとう

1960.05.17.
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