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詩神の出現

79才の春半ば 寒い冬も去って

花が急に開花しはじめたある夜の夢に

詩神が現われた 

男はそれまで 詩とは詩であって 

それが神であるとか 詩神と言う名称の付くものがあるとか

そんな事を考えた事がなかった 


ところが機が熟したのか 詩神が霧のすがたを以って現われた 

そして男の科学的 哲学的な真理探究の分析を

すべて霧に包み消しはじめ

「お前の考えているものは すべて間違っている」

といって 次々と消してしまうのであった


この出来事は この男が真理探究を断念した数日後に

おきたのである 

即ち断念したのが功を奏したのであろう


この男は 真理を探しまわるのも 欲であることを

以前から気付いていた 

しかし思考する癖がついていて 

思考し続けて来ていた 

寝ても 醒めても それのみの時間であった


ところがどうした恩恵か どうした風の吹きまわしか

詩の神を初めて見た事と 自分の思考は全部間違いである

ことを痛切に知らされた

男はやっと 詩神に応えようと思考を止めてしまった 


そして 天の手伝いをするべく

朝は東天を一番に眺めて 魔法の小箱から絵筆をとり出し

東の空を紅に染め 太陽よ来ませと

迎えたのであった


夜には星々のきらめく夜空に向って 両手を出して

その天体を動かす手伝いをしていた

この男はいよいよ 地上の知的人間心から幻想の世界へ 

天界の世界へと定着し始めたのであった


こうして二年はたった

二〇〇六年の同じく春五月

夕焼けの女神に巡り合えたのであった 

これが彼に決定的な歴史を与えることになるのである

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| 2006年 | 22:12 | TOP↑

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