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夫を甦らせたイシス女神の神話

エジプト文明の中で最もむつかしく、しかも最も興味ある謎は、翼にあります。それはイシス女神が翼を羽ばたかせることによって、夫オシリス神の生命を甦らせたという神話物語にあります。
イシス女神は、嘆き悲しみながら、殺された夫でるオシリス王の死体を探しまわります。そして方々に散らばって居た死体を見つけだし、それらを集めましたが、男根だけはどこにも見つかりませんでした。しかしそれらを台の上にのせて、元の人体の形にまとめあげました。
イシス女神は翼ある女神で、魔法の力をもって奇跡を起こさせる事の出来る女神でした。そして他にも様々な力あるマントラ(秘密の唱えごと)を持っていて、その特別の発声法を知っていました。イシス女神は、夫オシリス神のその遺体の上で翼を羽ばたかせて、特別のマントラを、特別の発声法で唱えました。すると不思議なことに、その死者の遺体が蘇って来たというのです。そしてその夫の魂を我が身に宿して、息子ホルスを産みます.――これがキリストの母、マリアの処女懐妊のモデルになったといわれています。
さてどうして、翼を羽ばたかせる事によって、生命が蘇ったというような神話が生まれたのか……ここが最もむつかしい所です。その謎の鍵は翼の上下運動の中に隠されています。それは、その上下運動の角度と、瞬間という時間制の中に秘められているようです。――その上下運動によっておきる瞬間・瞬間の一本の線が、角度を創ります。その角度は開きの角度を意味し、物を創造する場となります。その場において、生命は瞬間・瞬間につくられ、保持されていきます。
永遠の生命を夢みた太古のエジプト人は、その瞬間と線と角度が織りなす、連続する生命の詩的幾何学的閃きの中に、生命生成の源泉を夢みていたのでしょう。そして太古の人々は、この宇宙を生成している瞬間の連続と開きの角度の創造力をマントラの言語の中に秘めて、それを唱えたのでしょう。
瞬間が瞬間になる時、鳥が歌い始める。鳥のもつ元なるもの、その線上を閃きが走る。生命は瞬刻、瞬刻に創られ、軽やかに舞い踊る。天から舞い降りる白紙の様に、零と線と平面と立体を創りながら、それは舞うのである。
エジプトにおいて生命を甦らせた神話の神イシス女神は、生命を生み出す元なるものとして太陽の娘マァート女神と出産の神であるカバ女神と同一視され、その信仰はローマにまで伝わって行きました。そしてそのイシス女神の信仰は更に、処女懐妊という神聖な神話と,慈母及び良妻として、また奇跡を起こす魔法の使い手としてローマ人の心をとらえ、熱烈な信仰が起き、この信仰は単なる宗教的信仰にとどまることなく、その奥にある形而上学を研究する学者たちの為のパストフォリ(pastophori)とよばれる大学まで創設されました。これはBC80年頃の事です。
それが更にAD70年頃より増大し、イシスの祭典日は公共のカレンダーにまで記載されるほどの重要行事になり、キリスト教の一般的な導入に至るまで存続し、その信仰の勢いはギリシャにまで広がっていきました。
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