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風はやんだ

今日はランプがとても明るく輝いている
静かだ 心の中のようだ
山の無言(しじま)にないていたうぐいす
朝から晩まで ほとんど半年以上も山の平和を愛して
なき楽しんでいたうぐいす

仕事の手を休めては 
或いは朝のとばりが開け始めた頃
遠く近く ほんの手許で鳴き 
さえずってくれていたうぐいす

里の人はそれを知って 
この山の平和を乱してしまった
春が来たが群れなすうぐいすの声が
ハタとやんでしまった

里の人が楽しむために一つだけ 二つだけと取りにきて
すっかりうぐいすを取りつくしてしまったのだ

―――人の人生も これと同じだ
楽しいもの 歌を 美を よろこびを 天から 
この肉体に与えられて生れた そのよろこびをすべて
食いつくし 味わいつくしたらもう二度と人間として
生れて来ずに 種のつきはてた鳥のように
尽き果ててしまうのではなかろうか

美は美としてほどほどに眺め ほどほどに楽しむ
これが美を長く より以上に育ててゆくのではなかろうか
何もかも 喰いつくさずにはおかぬ人間のどん欲が
感覚 感情 理知の美を毒してしまうのだ
毒された意識だけが残り 人は死滅してしまう

汝が 人よ!
汝等は死につつある
美から離れつつある

美は 味は喰いつくしてはならない
美は そっとしておくもの
ソフトに眺めるもの
聞くもの
その歌声を聞くものである

その時人は より良き者へと
更に生き通す

1966.03.01.
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