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死者ハ

死者はどうして甦るのか
死者はどうして甦るのか
死者は甦らねばならない

一匹の青白い狼か 幽霊か
冴え渡りたる 月の夜の崖淵に立ちて吠えるよ
夜は氷の如く冷えて 鳴き声は響き渡る
深い夜のしじまに こだまして

彼は自己と別れを告げねばならないのか
彼方を見て吠えたてている 呪わしき運命を宿して
遠吠えは尚も聞こえて 聞きとる者もなし
月も闇も樹々も沈黙
哀れ 狼は吠え続ける

導き手 今も間見えぬ見知らぬ人 青白い獣は
死期を予期したのか
彼の求めているものは何か
夜か 彼自身の内なるものをか

知られぬままに 彼は求める
世界の闇が深くなる時
青白い獣はただ一人 友と別れて断崖の上に立つ
彼の叫びは悲痛だ

世界は死なねばならないのだ
彼はそれを予言している
世界は死すべきものなのだ
世界は元の世界に帰らねばならないのだ
成長した世界となって

狼は尚も吠え続ける
夜のしじまの中に 彼の求めは消えてゆく
いまだ知られざる彼方へ

見知らぬ彼の内なるものが 彼をこの断崖に連れて来たのか
夜は青く冷えて 彼を待っている
死すべき運命をもつ狼よ

古人は知っていた 昔 狼がいたと
山中で人を襲い もっとも怖れられていた獣なのだと
だがその彼も今はその種族が絶え 昔物語と化さんとしている

月の夜の青き花束の中に彼は消えていったのか
遠吠えはこだまして
世界が岸壁に立ちて 幽霊の如く吠えるのか

見知らぬ者 内奥の叫びをもって
「誠」が再び 彼の許に来ることを求めて
求めなき調べが 岸壁にこだまする
月は冴えて

1967.01.21.
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| 1967年 | 22:32 | TOP↑

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