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神話的な兵隊さん

私が子供の頃 その村に一人の兵隊の帽子を着た
気違いがやって来た
それはどこから来たのか 
さっぱりわからない人だった

昔の兵隊さんの帽子であった
赤い線の入った明治大正時代の兵隊の帽子です
そして彼は村の子供たちと 
遊んでくれました

一週間ほど その男は子供たちと戦争ごっこをして
遊びまわっていました
村の大人達は 男も女もその男のことを
気違いだと言いました
しかし私には気違いとは思えませんでした

私は その戦争ごっこに参加しないで
その男と子供たちが 
楽しそうに走り回っているのを見ていました

気違いなのかな…?と
不思議に思いながら村の人々は
ふいにその男の出現に 皆楽しそうに
それを見ていました

何の変化もないその村に
一つのお祭り騒ぎがやって来たのです
そしてその男を 気違いだと言いながら
見とれているのでした

人々は その男に食事を与えていました
その男は40才ぐらいの人でしたが 
赤線の入った兵隊帽をかぶって 
子供たちと天国をつくっていました

時には自分の周りに子供たちを坐らせて
戦争の作戦ゴッコの話をしていました 
かと思うと みんながさっと散って 
その男を追っかけ始めました

ところがその男はふいに 来た時と同じように 
一週間程して姿を 消してしまいました

お祭り騒ぎが終り
村は しゅんとしてしまいました
私はこの神話的な空気の中で
何か本質的なものを感じていました

ふいに現われ ふいに消えてしまう
そこが 好きだったのです

神話とはそんなものなのかなあ……
そんなところに本質的なものがあるのかなあ……と
ずっと思い続けて来たのでした

1987.11.22.
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